ジオ物語ー火山観測・プレートの動き

火山の観測 地面の動き(地殻変動)の観測について

三原山とその周辺では、こんな物を見かけることがあります。
表示板には、気象庁火山観測機器などと書いてありますが、これは何でしょう?

とんがり帽子、または、円盤のような形をしているものは、グローバル・ポジショニング・システム (GPS:Global Positioning System)の受信機です。GPS衛星からの電波を受けて位置を測定する装置で、カーナビと同じですが、カーナビの誤差が道路幅くらいあるのに対し、これは1㎜くらいまで正確に測ることができます。この装置を島内に沢山置いて、長い期間に渡って観測をすると、その位置の変化、つまり地面がどのように動いたのかがわかります。

 

オレンジ色の円筒は反射鏡です。ある地点から強力なレーザー光線をこの鏡にあてて、反射して戻ってくるまでの時間を計ると、2点間の直線距離がわかります。この鏡を沢山置いて、観測を繰り返し行うと、色々な場所の地面の直線的な距離の変化がわかります。

 

このような観測を地殻変動観測と言います。火山では、マグマの動きによって地盤が変化します。その変化を観測して、マグマの動きを推定し、火山情報で火山の状態を知らせたり、噴火の仕組みなどを研究したりしています。

 

GPSの観測点は島内に30点以上あります。これらの観測データを解析すると多くの観測点の位置が島の外側に向かって伸びていました。

上下(空と地面)方向では、空に向かって伸びているところが多くなっていました。

つまり、伊豆大島全体としては、膨らんでいることがわかりました。レーザー光線で観測した結果も2点間の距離が伸びているところが多くなっていました。

 

伸びの割合は
年に5ミリ~12ミリくらいです。

 

なぜ、膨らんでいるかというと、伊豆大島火山の地下にはマグマが溜まるところがあって、そこに地下の深いところからマグマが上がってきて、溜まり続けているためと考えられています。

お饅頭に、下からあんこを少しずつ詰めているような状態です。あんこがマグマです。

 

でも、心配しないでください。これは生きている火山としては普通のことで、マグマが溜まっているからといっても、近いうちに噴火するというわけではありません。現在は、伊豆大島の火山活動は静穏な状態であり、噴火の兆候はありません。

生きている火山 伊豆大島の形には地球の動きが関係している

伊豆大島火山は「成層火山」です。

成層火山は、同じ火口から何回も噴火を繰り返し起こし、そのときの溶岩や火山灰などが積み重なるので、円錐状になります。富士山や桜島のように景色の良い火山が多いです。

ところが、伊豆大島は北北西から南南東にのびた楕円のような形をしています。東や西のほうから眺めると綺麗な形をしていますが、北から見るといびつな形をしています。

 

何故、こんな形になったのでしょう。

その理由のひとつは、地球のダイナミックな運動『プレートテクトニクス』に関連しています。

 

地球の表面は岩盤(プレート)でできています。プレートは、りんごの皮のように1枚ではなく、サッカーボールのように分かれていて、10数枚あります。

しかも、プレートはサッカーボールのように縫い目で固定されているのではく、動いています。

 

プレートとプレートとの境界では、離れて両側に広がったり、ぶつかってこすれあったり、もぐりこんだり、ひきずりこまれたりして、大きな力が加わっています。この力が、地震や火山を生み出しています。

ですから、大きな地震が起こる場所のほとんどはプレートの境界ですし、生きている火山がある場所もプレートの境界です。

プレートとその動き

日本付近には4つのプレートがあって、伊豆大島はフィリピン海プレートと呼ばれる海側のプレートに乗っています。フィリピン海プレートは日本列島がある北西の方向に動いています。そして、東には太平洋プレートがあって押されています。

このようなプレート同士のぶつかる力によって、伊豆大島には北北西から南南東方向に押す力が加わっています。反対に、西南西から東北東方向には引っ張る力が加わっています。

 

伊豆大島の形は、このプレートの動きによる力が関係しているのです。

 

北北西から南南東方向に押されて、その方向の真横に引っ張られると、押される方向に沿って岩石が破壊されて、ひび割れを起こします。伊豆大島の形の伸びている方向にひび割れが起こるのです。

 

ところで、伊豆大島は山頂火口以外からも、たびたび、割れ目噴火や側噴火を起こしています。

その位置をみると、みごとに北北西から南南東方向にならんでいます。

 

伊豆大島火山は北北西から南南東方向にひび割れなどの地盤の弱いところがあって、そこで割れ目噴火や側噴火が繰り返し発生しました。

そのときの溶岩や噴出物が積み重なり、北北西から南南東方向に伸びた形になったのです。 地球規模のダイナミックな運動が伊豆大島の形を作っているのです。