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Mihara-yama central cone from northwest.
三原山は安永の大噴火(1777~1792年)で形成された中央火口丘(内輪山)です。
三原山斜面の黒い筋模様は1986年噴火の溶岩流、三原山斜面から手前のカルデラ床に広がる薄茶色の大部分は1950~1951年噴火の溶岩流、左中央の小高い地形は安永溶岩の噴出地帯です。
三原山の左上端には、1986年割れ目噴火のB火口列があります。
このサイトでは、カルデラ地形とそこに広がる新旧溶岩流などの全体像を観察することができます。
An'ei(1777-1778) lava flow. Pahoehoe toe and ropy surface.
カルデラ内遊歩道を進むと、左側に安永大噴火の1777~1778年の溶岩が分布しています。

▲小高い丘は溶岩が湧き出してきたところです。溶岩は流れやすい「パホイホイ溶岩」で、表面はなめらかです。
▲溶岩が流れたときに、しわ模様ができた「縄状溶岩」もみられます。
1986A lava flow tip
1986年11月19日、三原山火口から溢れた溶岩の先端部は、厚さが約5メートルあります。表面は起伏に富み、ゴツゴツした岩塊に覆われていて、アア溶岩といいます。
1951 lava clinker
アア溶岩は、パホイホイ溶岩に比べて温度が低く粘性が高い場合にできます。
表面はゴツゴツした岩塊で覆われ、その破片をクリンカーといいます。
Plant succession on old (1777,1951) and new (1986) lava
1986年溶岩流一帯では、植物の一次遷移の初期を観察することができます。伊豆大島では1986年噴火の1年後にハチジョウイタドリが確認されました。ハチジョウイタドリは溶岩の隙間に侵入して分布を広げ、自身の落とした葉で土を作ります。その土にススキなどが繁殖します。隣接する1951年や1777~1778年溶岩流一帯では、遷移が進んでいて、植生の違いがよくわかります。
Surface structure of Mihara-yama cone
遊歩道の三原山斜面登りでは、溶岩の断面を観察することができます。

▲スコリア、火山弾、スパターなどが積み重なった地層です。
▲アア溶岩の断面で、表面のクリンカーの下には固く緻密な溶岩があります。これは、内部でゆっくりと冷えて固まった溶岩です。
Agglutinate block on the 1986A lava flow
1986年カルデラ内割れ目噴火の溶岩流は、北部カルデラの北方向と北東方向に流れました。
写真中央右の黒い部分がB火口列からの噴出物が堆積したところ、その左奥が北方向に流れた溶岩です。
Agglutinate blocks on the 1986A lava flow
三原神社入口には、1986年噴火の溶岩流により火孔から約500メートル運ばれた大型のアグルチネートの塊があります。
高さは約5メートルで、緻密な溶岩の部分と降下したスパターなどが積み重なっています。
Summit pit crater, view from west
火口展望台では360度の風景を楽しむことができます。写真の手前に広がるのは大部分が1986年の溶岩、左端の高まりはB火口、その右側が剣ガ峰、その右側の一番高いところが三原新山です。
火孔は正面右よりの窪んだところにあります。
展望台の西側には、カルデラ・外輪山・伊豆半島・富士山などがみえます。
Summit pit crater, view from south
垂直の壁に囲まれた竪穴状の火孔近くの展望所からは、正面に剣ガ峰と火孔の北壁~東壁をみることができます。火孔壁には、新旧の溶岩や堆積物が層を成しています。
赤っぽい色をしているのは、溶岩が高温状態で空気にふれて酸化したものです。
最新の1986年噴火の溶岩は火孔壁の最上部にあり、冷えて固まるときに縮んでできた、たくさんの亀裂が縦に入っています。このような構造を柱状節理といいます。
Hornito on the 1951 lava flow
1950~1951年噴火では、三原山誕生以降初めて溶岩が火口外のカルデラ床へ溢流(いつりゅう)しました。
1951年溶岩はパホイホイ溶岩が多く、西火口縁(にしかこうえん)から斜面にかけては一部溶岩トンネルを作って流下しました。
トンネルの天井が破れ、溶岩を二次流出させて生じた塚がホルニトです。内部には長さ42メートルのトンネルや幅10メートルの空洞があります。
周辺のパホイホイ溶岩は、一部で薄い表面が割れ、内部構造がみられます。
17~19. 火口西縁、火口南西縁:三原新山、新島・神津島・式根島・利島
Scoria cone “Mihara-Shinzan”. Volcanic islands seen southward
三原新山は、伊豆大島の最高標高(758メートル)の火砕丘です。
1950~1951年噴火時に形成され、竪孔状火孔(たてあなじょうかこう)の生成により北半分が崩落し、火砕丘の中央断面がみられます。
<< 手前から利島・新島・式根島・神津島です。
Summit pit crater, view from south
火孔底を間近に見ることができる絶好のサイトです。火孔壁には、過去の噴火活動時の溶岩や噴出物が層を成しています。三原山山頂中央火孔は、直径300~350メートル、深さ200メ-トルの竪穴状をしています。
1986年噴火時には溶岩で満たされましたが、1年後の噴火によって陥没し、再び火孔となりました。現在は、火孔壁の崩落が進み、火孔底には土砂が堆積しています。火孔底と火孔壁との境界からは、噴気が噴出しています。
地表面温度は、1993年までは150℃を超えていましたが、その後は低下し、2000年以降は30℃~60℃の範囲内で変化しています。火孔壁上部には、1986年溶岩の柱状節理がみられます。
上の写真の火孔中央部を赤外熱映像装置で撮影した写真です。赤い色の部分が温度の高いところで、地表面温度の最高は約60℃です。噴気の出ている火孔底と火孔壁との境界部分が温度の高いところです。(気象庁伊豆大島火山防災連絡事務所、2010年7月23日撮影)
Southern crater rim, crater-wall view from east
三原山の東側の火口壁は垂直に切り立ち、火山弾が固まったアグルチネートの厚い地層、節理構造がみられます。
Eastern crater rim “Kengamine”,summit pit crater, view from east
剣ガ峰は三原山火口縁東側の高峰です。南側に三原新山と火孔、北側にB火口、北東側に1986年B溶岩流、裏砂漠、東側に櫛形山など広大な風景を望むことができます。
Fissure eruption on Nov 21 1986, B craters
1986年11月21日のカルデラ床割れ目噴火によってできた火口列は、南東から北西の向きに約1kmに渡って8つの火口があります。
火口には南側から番号が付けられており、写真はB2火口です。割れ目から噴出して落下した火山弾やスコリアが堆積しています。
火口の底の方には噴火前の古い地層もみえます。
Eastern crater rim “Kengamine” (749m)
剣ガ峰付近の火口内壁には、節理構造の亀裂や堆積物の隙間などが多くあり、そこから1年をとおして噴気を噴出しています。噴気は、雨水や地下水が地下で熱せられて水蒸気になり、岩石の隙間を通って地表に出て冷やされ、水滴になったものです。
特に、気温が低くなる冬には、多量の白い噴気が立ち上ることが多くなります。
有毒な火山ガスは観測されていません(2011年1月現在)。
1986 B lava
三原山の北部カルデラには、1986年11月21日のB割れ目噴火の溶岩や火口列が分布しています。
黒っぽいなだらかな丘は、火山弾・スパター・スコリアが降り積もってできています。
溝のように深くなっている場所はB火口列ですが、溶岩に埋まっていて火口そのものはみえません。
1986 B2 lava
B割れ噴火の溶岩流は、LB1、LB2、LB3と名前が付けられています。
LB2は主要な激しい噴火活動が収まった後に2次的に流出した長さ300メートルの溶岩流です(写真中央左の黒い筋)。
LB2周辺では、溶岩の湧出口・火山弾やスコリアの堆積面・小火砕丘など変化に富んだ地形を観察することができます。
“Kushigata-yama” west valley
櫛形山の西側には、谷のようになっているところがあります。
谷の断面では、櫛形山火砕丘のスパター、安永大噴火の溶岩を観察することができます。
Urasabaku
櫛形山展望台(標高670メートル)からは、三原山・カルデラ・裏砂漠を見渡すことができます。
裏砂漠は、火山灰やスコリアで覆われた植生が少ない地帯です。砂漠のような景観が生じた理由は、伊豆大島の卓越風向(南西~西)の風下にあたるため、強風の影響を受け、スコリアや火山灰が堆積しやすく保水性が小さいこと、火山ガスの影響を受けやすいことなどにより、植物の定着が阻害されているためです。
Caldera,caldera lim
三原山と外輪山白石山との間のカルデラ床には、安永溶岩やカルデラ形成期後の堆積物、1986年噴火の火山弾などが分布しています。
写真は白石山とカルデラ床で、素晴らしい景観を楽しむことができます。
Fissure eruption on Nov 21 1986, C craters
1986年11月21日に外輪山北西山腹で起こった割れ目噴火によって形成された火口列です。南東から北西方向約1キロメ-トルに11個の火口が並んでいます。
C火口列から流出した溶岩流は元町市街方向に流下し、元町に迫った様子を観察することができます。C火口列の11番目では植生の回復の様子を観察することができます。
火口の中は強風の影響を受けにくく、水もたまりやすいため、植生が回復しやすいのです。
Mihara-yama,view from north
カルデラ縁北部の展望台からはカルデラ、三原山、櫛形山、1986年B火口列、B溶岩流の広大な風景が広がっています。
Exposure of pyroclastic fall deposite
温泉ホテルからは、三原山・櫛形山・白石山・カルデラ・裏砂漠を北側から見渡すことができます。
また、B火口列と溶岩の全体像がみられます。
温泉ホテルの駐車場では、
カルデラ形成期後の降下スコリア堆積物と
外来流紋岩質火山灰(神津島838年)の地層を
観察することができます。